不動産賃貸借

大切な財産を誰かに「貸す」。
誰かの大切な財産を、自分のよりよい生活のために「借りる」。
貸主・借主双方の信頼関係の構築が何よりも重要です。

賃貸借契約の締結

不動産賃貸借契約は、貸主が所有している土地や建物といった不動産を、借主が賃料を支払うことで、契約で決められた使用方法に従って使用する契約です。

また、賃貸借契約は、物の売買のように、一瞬で取引が終了する契約とは異なり、貸主、借主という地位は、賃貸借契約が終了するまで続くところに大きな特徴があります。

そして、借りた不動産は、借主にとっては生活や営業の拠点として重要なものになります。

そこで、貸主、借主間の円満な関係の維持のためには、まず最初にきちんと契約の内容を理解したうえで賃貸借契約を締結し、契約内容を遵守することが重要です。

賃貸借契約は、貸主にとっては、自分で使用していない不動産を有効活用できる大きなメリットがありますが、反面、容易に解除や更新の拒絶ができないなど、リスクの高い契約でもあります。どのような方が借主となるのか、慎重に検討した上で契約を締結する必要があります。

地代・家賃の増減額交渉

地代・家賃の金額が、土地建物についての固定資産税など税金額の上昇や、経済状況の変化、近隣にある同種の建物と比較して、不相当になった場合には、貸主・借主共に地代・家賃の増減を請求することができます。

ただし、話し合いで合意ができず、裁判を行う場合には、裁判が確定するまでは、従前のとおりの地代・賃料が支払われます。

適正な賃料は、厳密に行うならば、不動産評価基準に則り、利回り法、スライド法、差額配分法、賃貸事例比較法などの方法により行いますが、専門的な側面が強いので、不動産鑑定士の先生のご協力をいただく必要があります。その際には、別途、不動産鑑定士費用が必要となります。

※賃料増減額請求については、こちらのコラムもご参照ください

滞納賃料への対応

賃料の支払いは賃借人の義務であり、これを怠ることは貸主・借主の間の信頼関係に亀裂を生じさせる行為ですので、滞納家賃が発生した際には、文書で滞納賃料の支払いを督促するなど、毅然とした態度で対応することが重要です。

滞納が長期間にわたっているような場合には、賃貸借契約を解除することも検討する必要があるでしょう。

賃貸借契約の解除

借主において、借りた不動産は生活や営業の拠点になるものであり、突然契約が解除されると、その生活に大きな打撃を与えます。このため、賃貸借契約を解除するには、単に契約違反(債務不履行)があったというだけでは足りず、その約束違反の程度が、貸主と売主との間の信頼関係を破壊するようなものであることが要求されています。

例えば、民法上、無断転貸がなされていた場合、賃貸借契約を解除できるとの規定がありますが、無断転貸の経緯や事情によっては、信頼関係は破壊されていないと判断されて、賃貸借契約の解除が認められない場合もあります。

また、貸主が契約違反の事実を知っていたにもかかわらず、それを長期間放置していたような場合には、違反の事実を黙認していたと思われてしまいかねませんので、違反の事実を知ったら、すぐにその改善を書面で申し入れることが必要です。

貸主から度重なる改善の要求を受けていたにもかかわらず、これを借主が無視していたというような事情は、信頼関係が破壊していると考える要素の1つになりうるものです。

賃貸借契約の更新拒絶・立退料

賃貸借契約の契約期間が終了しても、借主がそのままその不動産を利用し続けたい場合、契約の更新を行うことができます。しかし、借主が賃貸借契約の更新を希望しているにもかかわらず、貸主の方がこれを拒絶するには、借主の生活や営業の基盤を奪うことになるわけですから、それ相応の理由(正当事由)が必要になります。

正当事由の判断基準としては、その不動産を貸主が使用する理由、建物の老朽化、再開発の必要性などが挙げられますが、最終的には、貸主と借主、双方の具体的な事情から、どちらがその不動産をより必要としているかを、いわば天秤にかけて判断されます。

しかし、一般的には、その不動産を使用していない貸主よりも、実際に不動産を使用している借主側に有利な判断がなされることが多いです。そこで、貸主としては貸主の方に傾いている天秤を自らの方に傾けるため、「立退料」を支払う必要があります。

立退料は借主がその不動産を退去した場合の損失を補てんできるだけの金額であることが必要であり、賃貸借契約期間や不動産のこれまでの利用状況、移転先の状況などに応じて、適正な金額が判断されます。立退料の金額は、それぞれの不動産によって、ケースバイケースで異なりますので、例えば家賃の何か月分,何年分という明確な相場はありません。

建物の老朽化や立替などを理由に、貸主から突然立ち退きを要求されたというケースなどでは、ほとんど正当事由がないにもかかわらず、低額な立退料の支払しかなされない場合もあります。もし、貸主から不動産の立ち退きを要求された場合、まずはその立退料が適切かどうか、弁護士などの専門家にご相談されることをお勧めいたします。

契約終了時のトラブル

・原状回復

賃貸借契約が終了し、借りていた不動産を明け渡すときには、原状回復を行うことが原則です。これはすなわち、最初に借りた状態に戻して、不動産を返すという意味です。

しかし、建物を利用すれば、汚れるのは当たり前であり(通常損耗)、また、どんなにきれいに利用していたとしても、経年劣化をすることは避けられませんので、通常損耗や経年劣化については、貸主側が負担をするものと考えられています。すなわち、借主が行うべき原状回復とは、通常損耗や経年劣化を超えるものとなります。例えば、借主が貸した建物をゴミ屋敷にしてしまった場合には、ゴミの収去費用は借主の負担となります。

何が通常損耗であり、何が経年劣化であるかは、東京都都市整備局が作成した「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」が参考になりますので、そちらをご参照ください。

※こちらのコラムもご参照ください

・建物買取請求

借地契約が契約期間満了により終了した場合、借地人は地主に対して、借地上の建物を時価で買い取るように請求することができ、地主はこれを拒むことはできません。

また、建物の代金支払と建物の明け渡しは同時に行われるものとされ(同時履行)るため、事実上、地主は建物の代金を支払わなくては、土地の返還を求めることができません。

しかし、借地人が建物買取請求権を行使できるのは、借地契約が期間満了により終了した場合に限られると解されており、地主と借地人との間で借地契約が合意解約された場合や、借地人の契約違反(債務不履行)により、借地契約が解除された場合には、借地人は建物買取請求権を行使できないと考えられています。

定期建物賃貸借

通常の建物賃貸借では、いったん建物を賃貸に出してしまうと、貸主の側から契約を終了させることは一般的には困難ですが、定期建物賃貸借契約を締結すると、契約で定めた契約期間の満了によって、賃貸借契約が更新されることなく、賃貸借契約を終了させることできます。

建物定期建物賃貸借制度を利用すれば、例えば、マイホームを購入したけれど、転勤などの事情で一定期間、住まいを離れなくてはならない場合でも、マイホームを空き家にせずに、有効活用することができます。また、別途、中途解約を認める内容の特約を付けていない場合、200平方メートル以下の居住用建物以外については、借主からの中途解約が制限されていますので、一定の期間の賃料収入も期待できます。

ただし、定期建物賃貸借契約をしようとするときには、仮に、借主が定期建物賃貸借契約であることを理解していたとしても、必ず、あらかじめ賃貸借契約書とは別に、賃貸借契約の更新がないこと、期間の満了により賃貸借契約は終了することを記載した書面を交付しなくてはならないことに注意が必要です。

定期建物賃貸借は、賃貸借の更新がない点で、貸主に有利になりますが、他方で、借主には不利益になり、借り手がなかなか見つかりにくいことも想定されますので、貸主としては、賃料を相場より安くするなどの工夫がいるでしょう。

サブリース

サブリースとは、一般的に、転貸を目的とした一括借り上げのことを指します。「30年間家賃保証」などという宣伝文句で、アパートやマンションを一括して借り上げてくれるサブリース会社がよく見られます。

大家さん側からすると、このようなサブリースの手法は、空室リスクが回避でき、とても魅力的に感じられます。しかし、実際には、契約更新時に賃料の値下げ交渉が行われたりすることや、募集開始の数カ月は家賃保証の対象外である場合も多く、必ずしも長期間、一定金額の家賃保証がなされているわけではないことに注意が必要です。

また、サブリース会社が30年後に倒産していないとも限らず、30年間の「一定金額」の家賃保証はほとんどなされないのが実際のところであると思った方が良いかもしれません。

また、一般的には転借人、すなわち実際にその不動産を利用している人物を、大家さんが選択することはできず、その不動産を利用しているのが誰なのか分からないことになりかねないというリスクもあります。

さらに、途中でサブリース会社との契約(マスターリース契約)の更新を拒絶したいと考えても、サブリース会社がこれに同意しない場合、更新拒絶には正当事由が必要になります。この場合、大家さんがサブリース会社に対して、高額の立退料を支払わなくてはならないことがほとんどでしょう。

他方で、サブリースを行った場合、実際の借主との交渉や、トラブルの対応などはサブリース会社が行いますし、賃料の滞納はまず起こらないというメリットもあります。

サブリース契約を締結しようと思うときには、後悔のないように、契約書の内容をよく確認することが重要です。

※こちらのコラムもご参照ください

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