コラム

民法改正で賃貸借はこう変わる!不動産賃貸借 2018.08.09

2020年4月1日に改正民法が施行されます。現在の民法の規定の多くは約120年前に制定された時のままであり、制定当初とは社会情勢も変わってきていますが、判例や法解釈などの積み重ねに合わせて対応してきました。しかし、今回の改正で、これまで判例や法律の解釈に委ねられてきた部分についても、分かりやすく条項化されます。

それでは民法改正が、賃貸借契約にどのように影響するのでしょうか。本項では、賃貸借契約関する改正民法のうち、主なものについて解説いたします。

1 改正民法が適用される契約は?

そもそもどの契約は改正民法の対象となるのでしょうか。

改正民法は2020年4月1日から施行されますが、施行日よりも前に契約された賃貸借契約については、原則としてこれまでの民法が適用されます。一般的な借地や借家の場合、更新時期が2020年4月1日以降である場合も、最初の契約が2020年4月以前ならば、現行の民法が適用されます。

すなわち、改正民法が適用されるのは、2020年4月1日以降に新しく締結された契約となります。

2 敷金の明文化

賃貸借契約締結時に、当たりまえのように授受されている「敷金」。しかし敷金の取り扱いについて、実はこれまで民法に明確な規定がなされていませんでした。

このため、改正民法では、敷金を「いかなる名目によるかを問わず、…賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義しました。すなわち、未払の賃料や、原状回復費用について未払いがあった時に備え、あらかじめ担保として差し入れておく、いわゆるデポジットであるということです。

デポジットですので、賃料の未払いや原状回復費用の未払いがあった場合には、賃貸人は賃貸借契約終了時に、敷金から未払い分を差し引いて賃借人に返還します。

しかし、これは現行民法下でも同様の取り扱いがなされていますので、実務に特段大きな影響を与えるものではありません。

3 退去時の原状回復

賃貸借契約が終了し、建物から退去する際には、借主は建物を、原状に復さなくてはなりませんでした(これを「原状回復」といいます)が、どの程度が「原状」なのかについては明確に定められておらず、トラブルの種となっていました。

そこで改正民法では、条文で明確に原状回復を行う範囲について、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く」と定義づけられました。

しかし、これも敷金の場合と同様、現行民法下でも独自にガイドラインが作成されるなど、同様の取り扱いがなされていましたので、特段大きな影響はないものといえるでしょう。

4 連帯保証人

賃貸借契約の際に、借主の賃料未払いのリスクを分散させるため、連帯保証人が必要な場合も多いかと思います。今回の民法改正では、連帯保証人についての規定が大きく変わるので、注意が必要です。

具体的な変更点は、以下のとおりです。

① 極度額の設定が必要

② 主債務者(借主)から連帯保証人への情報提供義務

③ 連帯保証人に対する債権者(貸主)の情報提供義務

順を追って説明しましょう。

① 極度額の設定が必要 極度額とは、保証する金額の上限のことです。賃貸借契約において家賃の滞納が起こった場合、滞納額は借主が家賃を支払わない限り、天井知らずに増えていきます。このため、連帯保証人は貸主から思いもよらない金額の請求を受けるおそれがあります。この不具合を避けるため、改正民法では、連帯保証人が支払うべき債務の上限を定めるように規定したのです。 具体的に言うと、これまで連帯保証人は、借主が支払わなかった家賃例えば1年分であろうと、10年分であろうと全額支払わなくてはならなかったのですが、改正民法では、あらかじめ契約時に、支払わなくてはならない上限額が定められることになります。したがって、借主の家未納額が10年分であったとしても、契約書で上限が1年分と定められている場合には、連帯保証人は家賃の1年分を支払えば足りるということです。

② 主債務者(借主)から連帯保証人への情報提供義務 借主が会社などの事業者で、個人を連帯保証人として事務所用などのテナントビルや店舗用の建物などを借りる場合、借主から連帯保証人に対して、借主が、他にどのような借金をしているかなどの財務状況などを伝えなくてはなりません。

③ 連帯保証人に対する債権者(貸主)の情報提供義務 連帯保証人から、貸主に対して、借主の家賃の支払状況などについて問い合わせが有った場合には、借主はこれに応じなくてはなりません。

以上のとおり、今回の民法改正では貸主と借主との間の関係では、これまでの実務と大きな変わりはありませんが、連帯保証人のありかたには大きな変化があります。特に、極度額の設定については、賃貸借契約書に記載がないと、連帯保証契約が無効とされますので、注意が必要です。

特に賃貸借契約書のひな型をそのまま使っている貸主の方は、契約書の記載の見直しを行ってください。

以上

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