コラム

ワンマン理事長に辞めてもらいたい!不動産管理 2018.01.31

Aさんが住むマンションでは、管理組合の理事長は輪番制で決めていました。しかし、今回新しく区分所有者となったBさんが、理事長に立候補したので、Bさんが管理組合の理事長に就任しました。しかし、Bさんはあまりにワンマンであり、皆の意見を無視して管理会社の変更計画を進めています。

Aさんはマンションの理事を務めていますが、現在の管理会社に特に不満はなく、また、Bさんが変更予定の管理会社からリベートを取っているようだとの噂も耳にします。

AさんはこのままだとマンションがBさんに乗っ取られてしまうのではないかと不安です。Bさんに理事長を辞めてもらう良い方法はないでしょうか。

1 管理規約の定め

大多数のマンションでは、国土交通省が定める標準管理規約を採用しているかと思います。

標準管理規約においては、理事長の選任及び解任については、おおむね、以下のように定められています。

・理事長は管理組合の「役員」である

・理事長は理事の互選によって選任される

・役員の選任及び解任については総会で決める

このことを前提とすると、「理事」を含む「役員」の「選任」は総会で行い、総会で選任された理事の中から理事会で「理事長」を選任し、「理事長」の解任は「総会」で行うことが、一般的な手続きの流れと言えそうです。

しかし、総会で理事長の解任を行うとなると、議決権の半数以上を有する組合員が出席し、出席組合員数の過半数の賛成が必要になります。

また、総会の招集権者は理事長にありますので、Aさんのマンションの場合、現理事長のBさんは、自らの解任を議題とする総会の招集は行わないでしょう。そうだとすると、理事長以外の理事が総会を招集しなくてはなりませんが、その場合、組合員数の5分の1及び議決権総数の5分の1以上にあたる組合員の同意を得なくてはなりません。

マンションの規模が大きくなればなるほど、組合員の数は増えますので、足並みが揃いにくいのが現実です。総会で理事長を解任するには、組合員の意思統一がどれだけ図れるかが大きなポイントとなります。

2 最高裁平成29年12月18日判決

それでは理事会で理事長を解任することはできないのでしょうか。理事、すなわち役員を解任することは理事会でできないとしても、理事長は理事会で選任されています。そうであれば、理事「長」については理事会で解任し、理事長をヒラの「理事」にすることはできても良いように思われます。

他方で、標準管理規約では、理事の互選によって(すなわち理事会で)決定できるのは、理事長の選任についてしか定められておらず、解任については特に定められていないのだから、理事会では理事長の解任はできないと解することもできそうです。

この点について見解が分かれていましたが、最高裁平成29年12月18日判決は、「理事会で選任した理事長については、理事の過半数の一致により理事長を解任できる」との判断を示しました。最高裁の裁判例は、先例として非常に強い拘束力を有しており、事実上、法律と同じような効果があります。つまり、理事会で過半数の同意を取れば、理事長を解任することが可能ということです。

理事会内であれば、理事間で問題意識を共有しやすく、また、理事会の招集もスピード感をもって行うことができるでしょう。上記の最高裁裁判例は、理事長の解任をより簡単な方法で可能にしたという点で、マンションの管理組合の運営にあたり、画期的なものであるといえます。

以上

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