コラム

どこまで管理会社に任せていいのですか?不動産管理 2017.12.11

Aさんは自分が持っているアパートの管理全般を、ほぼ管理会社に丸投げしています。管理会社は借主からの家賃を受け取ったり、建物の清掃などを行ってくれたり、クレーム対応を行ってくれるのでとても助かっています。

しかし、ある時、管理会社から「家賃が未払の借主に未払家賃を請求したが、任意に支払ってもらえなさそうである。これ以上、管理会社で交渉することはできないので、今後の交渉は自分で行ってください」と言われてしまいました。そのようなことを急に言われても、Aさんとしてはどうしたらいいか分からず、困ってしまいます。

1 管理会社に任せられること

Aさんのように、賃貸不動産についての管理の全てを、不動産管理会社任せにしている大家さんも多いかと思います。家賃の受け取りや、日常的な建物の手入れなどを任せられるので、円滑な賃貸経営のためには、不動産管理会社の存在は欠かせません。

しかし、だからといって、賃貸不動産の管理について、全てを管理会社に任せられるかといえば、そうではありません。例えば借主との間のトラブルについて、管理会社に任せきりにしてしまうと、管理会社が「非弁行為(ひべんこうい)」として罰を受ける可能性もあります。

弁護士法72条には、「弁護士でない者は報酬を得る目的で法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない」と定められています。

すなわち非弁行為とは、弁護士でない人が、報酬を得る目的で法律事務を扱うことを指し、これに違反すると、最悪の場合、刑事罰を受けるおそれがあります。

管理会社は大家さんから管理委託料を受け取っているので、管理会社が行う業務が「報酬を得る目的」でないというのは難しいかもしれません。それでは、どのような行為が「法律事務」と言えるのでしょうか。

2 「法律事務」とは

弁護士法72条にいう「法律事務」について、最高裁判所は、「交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るもの」と判断しました(最決平成22年7月20日)。すなわち、賃貸借契約において、具体的に紛争状態にまでは至っていなくても、将来的に法的なトラブルになることが不可避である案件については、「法律事務」に当たるものと考えられています。

したがって、未払賃料の取立や、賃料の増減額交渉、立退交渉や契約終了時の原状回復費用の請求、賃貸借契約の解除など、借主が大家さんからの請求について、争ってくることが予想されるトラブルについては、「法律事務」として、管理会社がこれを行うことはできません。

3 Aさんの場合

それでは設例のAさんの場合を見てみましょう。未払家賃の取立は、弁護士法が禁じる「法律事務」に当たると言えそうです。例えば、借主が支払いを忘れていて、注意喚起をすればすぐに支払ってもらえるような場合、すなわち将来的に法的なトラブルにはならないような場合でない限り、管理会社が借主に対してこの取立交渉を行うことは、原則として認められません。

したがって、「管理会社で交渉することはできない」とした管理会社の判断は正しいものといえます。

この場合、Aさんは自分でまたは弁護士に依頼をして、賃借人に対し、未払家賃の取立を行わなくてはなりません。法的なトラブルの対応は、文書の作成、交渉、訴訟手続きなど、複雑かつ専門的な手続きが多く、大家さんが個人で行うには大きな負担となります。

借主とのトラブルが避けられない大家さんこそ、すべてを管理会社に任せきりにしないで、普段から弁護士などの専門家とのつながりがあると心強いでしょう。

当事務所では、大家さんの法的トラブルに対応するプランもご提案しております。

以上

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